がん検診は多いほど安心?利益と不利益、任意の検診オプションを選ぶ前に
こんにちは、白衣ゆいです。
この記事で扱うのは、症状がないときに任意の検診オプションを選ぶ考え方です。要精密検査の指示や治療・経過観察のための検査を、自己判断で中止・延期するための記事ではありません。
健康診断やがん検診の案内が届くと、「せっかくだから、できるだけ多くの検査を受けておこう」と思うことはありませんか?
大切な自分の体のこと。病気を早く見つけたい、安心したいという気持ちは自然なものですよね。
でも、がん検診は検査の種類や回数を増やせば、それだけ安心につながるとは限りません。
今回は、PIVOTの中川恵一先生が出演する動画をきっかけに、がん検診の「利益」と「不利益」について一緒に考えてみたいと思います。
医学的な説明は、国立がん研究センター「がん情報サービス」の公開資料をもとに整理しました。
がん検診は、何のために受けるの?
がん検診というと、「体の中にあるがんを見つける検査」というイメージが強いかもしれません。
もちろん、がんを早期に発見することは大切です。
ただし、がん検診の主な目的は、単に多くのがんを見つけることではありません。
がんによって亡くなる人を減らすことが、大切な目的です。
そのため、国が推奨するがん検診は、研究によって死亡率を減らす効果が確認され、検査による利益が不利益を上回ると判断されたものです。
「新しい検査だから」「詳しく調べられそうだから」という理由だけで、誰にでも勧められるわけではないんですね。

検診には「利益」と「不利益」がある
がん検診には、早期発見によって治療の負担を軽くできる可能性や、がんによる死亡を防ぐという利益があります。
一方で、検査を受けることによって生じる不利益もあります。
ここで知っておきたいのが、次の3つの言葉です。
① 偽陽性:がんではないのに、疑いがあると判定される
実際にはがんがないのに、検診で「がんの疑いがある」「精密検査が必要」と判定されることです。
結果が分かるまで不安を感じたり、追加の検査によって身体的・経済的な負担が生じたりすることがあります。
ただし、検診で「要精密検査」と判定されたこと自体が、偽陽性と確定したことを意味するわけではありません。
② 偽陰性:がんがあるのに、見つからない
反対に、実際にはがんがあるのに、検診で精密検査は不要と判定されることもあります。
どのような検査でも、すべてのがんを確実に発見できるわけではありません。
だからこそ、検診結果が「異常なし」だったとしても、気になる症状があれば医療機関に相談することが大切です。
③ 過剰診断:命に影響しないがんまで見つける
少し難しい言葉ですが、ぜひ知っておいてほしい考え方です。
がんの中には、非常にゆっくり進行するなど、生涯にわたって命を脅かさないものもあります。
そのようながんを検診で発見することを「過剰診断」といいます。
発見した段階で、そのがんが将来どのように進むかを正確に見分けるのは難しく、本来は必要なかったかもしれない治療につながる場合があります。
これは、単に検査結果が間違っていたという意味ではありません。
本当にがんが見つかっていても、過剰診断になることがあるという点が、偽陽性との大きな違いです。
なお、過剰診断の可能性があるからといって、診断されたがんの治療を自分で中止してよいという意味ではありません。治療方針は必ず担当医と相談してください。
検査を増やすほど安心、とは限らない理由
PIVOTの動画では、甲状腺がん検診と過剰診断、自治体が実施するがん検診の方法や科学的根拠が話題になっています。
ここで考えたいのは、「詳しく調べること」と「健康を守ること」が、必ずしも同じではないという点です。
検査の回数や種類を増やすと、偽陽性による追加検査や、過剰診断などの不利益が増える可能性があります。
検査によっては、出血などの合併症や放射線被ばくといった負担もあります。
もちろん、必要な検査を避けるべきだという話ではありません。
大切なのは、自分にとって検査を受ける利益が、不利益を上回るかどうかです。

対象年齢と受診間隔にも理由がある
国が推奨するがん検診には、それぞれ対象となる年齢や受診間隔が定められています。
これは、がんになる可能性や検査の効果、不利益などを総合的に考えて決められたものです。
「去年受けたけれど、今年も同じ検査を追加した方が安心かな?」
そんなときは、まず推奨されている間隔を確認してみましょう。
一方で、家族歴や過去の病気、現在の健康状態などによって、個別の判断が必要になる場合もあります。
対象年齢や具体的な受診間隔は、検査の種類によって異なります。自治体の案内や国立がん研究センターの情報を確認し、迷ったら主治医に相談してください。
任意の検診オプションを申し込む前に
健康診断のオプション検査や任意のがん検診を検討するとき、私は次のような質問を整理しておくとよいと思います。
- この検査は、何のがんを調べるもの?
- 自分の年齢や健康状態に合っている?
- がんによる死亡を減らす効果は確認されている?
- 偽陽性や過剰診断など、どんな不利益がある?
- 異常が見つかった場合、次にどんな検査が必要になる?
- 費用や身体への負担はどのくらい?
全部を自分だけで判断する必要はありません。
分からないことは、検診機関や自治体の担当窓口、主治医に質問して大丈夫です。
また、職場の健康診断とがん検診は、必ずしも同じものではありません。すでに受けた検査の内容を確認することも、重複を避けるための一歩になります。
症状がある場合や「要精密検査」は別の話
ここは特に大切なポイントです。
今回お話ししているのは、主に症状がない人が、早期発見を目的とするがん検診を選ぶ場合の考え方です。
すでに気になる症状がある場合は、次のがん検診を待たずに医療機関へ相談してください。症状が強い、急に悪化した、受診の判断に迷う場合は、早めに医療機関へ相談してください。
また、検診結果で「要精密検査」と指示された場合には、必要な精密検査を受けることが大切です。
「検査には不利益があるから、精密検査も受けない方がいい」ということではありません。
医師から検査や経過観察を指示されている場合も、この記事を理由に自己判断で中止・延期せず、疑問があれば担当医に確認してください。
まとめ|大切なのは、検査の数より自分に合った選び方
がん検診は、私たちの健康を守るための大切な手段です。
ただ、検査には利益だけでなく、不利益もあります。
だからこそ、「できるだけ多く受ける」ことだけを目標にせず、科学的根拠のある検診を、自分に合った方法と間隔で受けることが大切です。
任意の検診オプションが気になったら、まずは「この検査は自分に必要なのかな?」と確認してみてください。
安心を求める気持ちも大切にしながら、納得できる検査の選び方を考えていきたいですね。
白衣ゆいでした。
参考にした動画・資料
- PIVOT|中川恵一先生出演・働く世代のがん予防に関する動画甲状腺がん検診と過剰診断(3:45〜4:19)、自治体がん検診の方法・対象・費用・科学的根拠(8:34〜10:00)を問題提起として参照。
- 国立がん研究センター がん情報サービス|がん検診について検診の目的、利益と不利益、偽陽性・偽陰性・過剰診断、推奨される対象年齢と受診間隔。
- 国立がん研究センター がん情報サービス|がん検診国が推奨する各種がん検診の方法と受診条件。
- 国立がん研究センター がん情報サービス|がんの検査について診断・治療・経過観察で行う検査の目的と、担当医への確認。
※この記事は一般向けの健康情報です。個別の検査や治療の必要性を判断するものではありません。
